契約書をレターパックで送れる?適法な郵送手段を解説
契約書を郵送などで相手方に送り届けるとき、送付手段の選択を誤ると法律違反になることがあります。郵便法と「信書」の送付手段についてまとめました。
契約書を送るときにどんな手段を使っていますか?
紙で契約を締結した場合、自社分の押印が終われば、契約の相手方分とあわせて2通を届け、そのうち1通を自社分として返送していただくことになるはずです。
営業担当者が手持ちで訪問し、回収するのが一番丁寧で理想的かもしれません。しかし、実際はそのような時間もとれず、各社なんらかの送付手段を利用していることでしょう。ところで みなさんは、契約書を送付する際、どんな送付手段を候補として検討し、選択しているのでしょうか?
この点について、ビジネスパーソンの方々向けに匿名アンケートをお願いしたところ、80%超の方々が「郵便もしくはレターパック」を使って契約書を送っている、との回答が集まりました。
宅配便・メール便で契約書を送付するのは違法
契約書は大切な文書ですから、普通郵便で送るのではなく、相手方に届いたかどうかの確証がほしいところです。受け取った相手も、普通郵便で配達されては不安に感じるかもしれません。
そのため一般には、番号で追跡ができる書留郵便・レターパック・宅配便・メール便等を利用して送付するケースが多いのではないでしょうか。社内規程により、重要書類は追跡できる送付手段で送るよう義務付けている会社も少なくないはずです。
しかし、日本郵便株式会社が取り扱う郵便またはレターパック以外の手段で契約書を送付をすると、違法となる可能性がある という点は、気をつけなければならないポイントです。
信書送達の独占を認める郵便法
このルールを定めている法律として、まず抑えておくべき法律が郵便法です。第4条をみてみましょう。
第四条(事業の独占) 会社【編集部注:日本郵便株式会社】以外の者は、何人も、郵便の業務を業とし、また、会社の行う郵便の業務に従事する場合を除いて、郵便の業務に従事してはならない。ただし、会社が、契約により会社のため郵便の業務の一部を委託することを妨げない。
2 会社(略)以外の者は、何人も、他人の信書(特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書をいう。以下同じ。)の送達を業としてはならない。二以上の人又は法人に雇用され、これらの人又は法人の信書の送達を継続して行う者は、他人の信書の送達を業とする者とみなす。
3 運送営業者、その代表者又はその代理人その他の従業者は、その運送方法により他人のために信書の送達をしてはならない。ただし、貨物に添付する無封の添え状又は送り状は、この限りでない。
4 何人も、第二項の規定に違反して信書の送達を業とする者に信書の送達を委託し、又は前項に掲げる者に信書(同項ただし書に掲げるものを除く。)の送達を委託してはならない。
他人の「信書」を送ることを業とできるのは、原則として日本郵便株式会社だけ。郵便法4条には、はっきりとそう書かかれています。
総務省「信書のガイドライン」では契約書は信書に該当
そこで次に問題になるのが、「信書」とは何か、契約書は「信書」に該当するのか、という点です。条文の中で信書が定義されたカッコ内「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」を読んでもよくわかりません。
そこで、総務省が定める「信書のガイドライン」をチェックすると、信書には以下のものが含まれると定められています。
契約書は、「請求書の類」に含まれるものとして信書に該当する旨はっきりと明記 されていました。したがって、宅配便やメール便で契約書を送信すると、郵便法違反になってしまうことになります。
信書と郵便法のルールを知らないビジネスパーソンの割合は45%
そこで今度は、契約書を送付する手段の選択にあたって、みなさんがこの郵便法の規定を意識しているのかについて、アンケートしてみました。
予想どおり 45%のビジネスパーソンが、郵便法の定めや信書に該当することを知らないまま、契約書の送付手段を検討していた との回答。
法務担当者や弁護士の方にとっては郵便法も常識なのかもしれませんが、はがきや便箋で手紙を書くことがなくなった現代において、信書に関する郵便法知識もだんだんと一般常識とは言えなくなっています。会社の中では、今日も気づかないうちに、小さなコンプライアンスを日々起こしているかもしれません。
レターパックが最適な送付手段だが往復コストと手間はバカにならない
大切な契約書を送るためには、番号等で追跡ができる仕組みが必要だが、宅配便・メール便は法律上使えない…。
こうなると、書留郵便かレターパックのいずれかで送るのが現実的ということになりますが、出しやすさを含めたUXの良さを考えると、契約書の郵送には、全国どこでも一律360円で送付でき、番号で追跡もできるレターパック(レターパックライト)を選択するのがもっとも現実的 でしょう。
しかし、まず問題となるのはその送付にかかるコストです。前後の作業コスト等ふくめれば一件あたり片道最低700円程度、さらに返送用レターパック代まで含めれば1通1,000円をゆうに超えるコストがかかる、という計算になります。
加えて、ここでは人件費を作業時間8分/1通として見積もっているものの、2020年に入り新型コロナウイルス感染拡大の影響で テレワークとWeb商談が前提となった今、この手間は倍以上 に膨れ上がっていることは間違いありません。
一方、クラウドサインなどの電子契約を利用した場合、こうした郵送コストや手間は一切発生しません。加えて、電子契約には印紙を貼付する義務もないため、印紙代のコストも一緒に削減することができます。法を破るリスクもゼロに成った上に、契約書1件あたり軽く1,000円のコストダウンが図れる、というわけです。
業務効率化・スピード化の観点だけではなく、こうしたコンプライアンス遵守とコスト削減の観点からも、契約の電子化をおすすめしたいところです。
補足:信書便について
解説では触れませんでしたが、最初のアンケートの回答項目には第三の選択肢として「特定信書便」を挙げていました。これは一体なんでしょうか?
上記で述べたとおり、信書は日本郵便株式会社の郵便(レターパック含む)で送達すべきと郵便法に定められています。ここに、特別法として「民間事業者による信書の送達に関する法律(信書便法)」が平成15年4月に施行され、それまで国の独占とされていた信書の送達事業について、民間事業者の参入が可能となりました。
つまり、原則としては郵便法により日本郵便が信書送達を独占しているものの、この特別法に基づき許認可を受けた事業者については、例外として信書便の送達を請け負うことができる ということです。
一般信書便と特定信書便の2つの参入区分がありますが、令和2年3月13日現在で一般信書便事業者はゼロ、特定信書便事業者は549となっています(そのため、アンケートの選択肢は「特定信書便」のみとしました)。一部の宅配事業者や、バイク運送業者などがこの許認可を受け、信書を送達するサービスを提供しています。
まとめ
- 郵便法により、信書の送達は日本郵政株式会社が事実上独占している
- 総務省の信書ガイドラインにより、契約書は信書に該当する
- 45%のビジネスパーソンが、郵便法と信書ルールを知らずに契約書の送付手段を選択
- レターパックでの送付が現実的だが、電子契約もコンプライアンスとコスト削減の近道
画像:muu / PIXTA(ピクスタ)
(橋詰)
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