業界初の「無人型本人認証」にチャレンジするAdobe社のリーガルテックサービス
Adobe社がオンライン本人認証サービスに参入。公的証明書と自撮り写真(セルフィー)を機械学習で解析する無人型のリーガルテックサービスに、業界で初めて挑戦します。
電子契約締結時の本人認証サービス「Government ID Authentication」
フォトショップやイラストレーターをはじめ、クリエイター向けソフトウェア企業としてのイメージが先行するAdobe社。PDFを普及させた功績を持つ、ドキュメント・ソリューションの老舗でもあります。
そのAdobe社が、主に金融機関など厳格な本人認証を必要とする業界向けに、電子契約をよりセキュアに締結するためのオンライン本人認証 を電子契約のオプションサービスとして提供することを発表しました。
Implementing an e-signature solution is a simple way to digitally transform your company, attract new business online, and help customers save time in any enrollment or onboarding process. But for some industries, especially banking and other financial services, e-signatures are a no-go unless they can confidently verify the identity of their customers before providing digital onboarding services.
Adobe has solved this problem with the latest release of Adobe Sign that pioneers an industry-first signer identification option called Government ID Authentication, which uses a physical ID, like a driver’s license or passport, as a form of digital ID authentication.
公的証明書と自撮り写真(セルフィー)をクラウド上で分析
リリース文の説明では少しわかりづらいところがあるので、動画をまずご覧いただくのが良いと思います。
▼ Adobe Sign Government ID Authentication
ユーザーは、このGovernment ID Authenticationオプションがついた電子契約を締結する際に、以下のステップで本人認証を行います。
① 公的証明書認証オプションが設定された電子契約にPCからアクセス
② 自分のスマートフォンの電話番号をPC上で入力するよう求められる
③ 入力した番号あてAdobe社からSMSが送信され、クリックするとアプリが起動
④ ユーザーがアプリで公的証明書を撮影してAdobe社に送信
⑤ ユーザーがアプリで自撮り画像(セルフィー)を撮影してAdobe社に送信
⑥ Adobe社がクラウド上で公的証明書の真贋および証明書写真と自撮り画像を分析
⑦ 証明書の真正と顔写真との一致が確認されれば、電子契約のサイン欄がアクティブ化
マーケティングマネージャーのMike Prizament氏がVenture Beatの取材に対し答えたところによれば、公的証明書の券面パターン、フォント、ホログラム、レイアウト等の特徴を、Adobeの公的証明書データベースと機械学習を使って分析し真贋を判定するとともに、眼球間の距離等を使って自撮り画像との一致を判定する仕組み とのこと。
なお、第三者機関の信用情報や犯罪歴データベースとの照合は行っておらず、あくまで、Adobe社の責任において真正かどうかを判定するものとなっています。
なりすましを防止する現実的ソリューション
契約締結において必ずつきまとう「なりすまし」リスクの問題。
日本では、「印鑑は本人が大切に保管し家族や従業員含め他人は決して押さないはずの道具である」というフィクションに依拠し、長らくこれに対抗してきました。しかし、オンライン取引により紙を使って契約をする機会自体が減り、スキャナと3Dプリンタ等を用いた偽造も容易になった今、いよいよ限界を迎えています。
そんな流れを受けて、2018年11月に犯罪収益移転防止法(犯収法)の施行規則が改正され、日本でも金融機関の口座開設時の本人確認をネットで行うことが法的に認められました(2018年11月27日付日本経済新聞「口座開設時の本人確認、30日からネットで完結 警察庁」)。電子署名を用いた電子契約も普及しはじめ、オンライン取引はより便利かつ安全になりつつあります。
しかし、こうした仕組みもなりすましのリスクを完全に排除できるものではないのも事実です。そこに、
- ID&パスワード
- 公的証明書
- 顔(写真)
- PC&スマートフォン
といった、誰もが今使えるものをかけあわせた多要素認証により、なりすましリスクを最小化させる現実的なソリューションを実現 したAdobe社。一般的に行われている証明書を撮影した画像を担当者が目視確認するだけの仕組みよりも安全であることは、間違いないでしょう。
(橋詰)
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