契約書を作成する際のフォントの選び方【英文契約書編】
英文契約書を作成する際、フォントは何をどういう基準で選べば良いのか?契約実務のプロフェッショナルたちがおすすめする英文契約書の定番フォントをご紹介します。
英文契約書のフォントは何を選ぶべき?
英文契約書をまっさらな状態から作る機会は、そうそうあるものではありません。それだけに、いざ英文契約書を作成したり修正したりする機会に出くわすと、無数にある英字フォントからどれを選ぶのが正解なのか分からず、迷ってしまうもの。
契約書のフォントを指定する法律もありません。だとすると、契約書の本質・内容とは関係ないフォント選びに迷っていたずらに時間が過ぎてしまうのは、非生産的 です。
そこで、米国の法律実務家が書いた書籍やTwitterでのご意見を参考に、これを選んでおけばまあ間違いはないと言って良い定番フォントを3つ、ご紹介したいと思います。
英文契約書における定番フォント3選
(1)Times New Roman
まずは昔ながらの契約書でもよく見かける伝統的フォント、Times New Romanです。
いかにも契約書っぽい見た目の印象通り、格式を重んじる業界(金融など)の契約書で今でも好まれて使われるフォント です。英文契約書のひな形集などを見ても、Timesを使用しているものはたくさんあります。
一方で、ケネス・A・アダムス『英文契約書ドラフティングのためのスタイルマニュアル』では、タイポグラフィの専門書籍(“The Complete Manual of Typography”や“Typography for Lawyers”)を引用しながら、Timesは一行の幅が狭い新聞用に開発された字間の狭いフォントであり、一行の幅が広い契約書においては視認性が必ずしもよくない点でお勧めしない、と酷評しています。
(2)Arial
次に紹介するのが、Timesとならんでよく見るようになったArialです。
Mac OSに標準搭載され美しさに定評ある「Helvetica」をWindows上でも代替できるネット時代の標準フォントという位置付けで、Timesの読みにくさが解消された現代的なフォント として人気があります。Twitterでも、法律実務家に好まれている様子が伺えました。
「アライアル」と発音されることも多いのですが、Arialフォントの作者本人は「エイリアル」と発音しているそうです。
(3)Calibri
最後の一つ、Calibriを紹介します。
文字密度=情報量が高く、かつ スクリーン(画面上)での視認性に優れる など機能性の高さが売り。現地でお仕事をされている法律実務家複数人から、「最近契約書でよく目にするようになった」とのコメントをいただきました。Office 2016での英文のデフォルトフォント となっているのが、シェアを伸ばしている一因と考えられます。
先述の『英文契約書ドラフティングのためのスタイルマニュアル』でも、印刷するとややディティールが損なわれるという懸念点は示されているものの、一番のお勧めフォントになっています。また、Adobe社による「ADOBE LEGAL DEPARTMENT STYLE GUIDE」P4でも、Calibriが推奨されています。
無難に選べばArial、電子契約時代を見据えればCalibri
Twitterにいらっしゃる法律専門職のみなさんにご回答いただいたアンケート結果がこちら。
伝統を重んじる傾向が強い法律専門職の方にとっては、Times New Romanがまだまだ人気なのでは?と思っていたところ、予想に反してArial支持者数が拮抗する結果となりました。一方、Calibriは目立ちはじめたとはいえ、実際に採用している方は現状少ないようです。英語圏でアンケートを取れば、もっと多いかもしれません。
Timesが一位とはいえ、「伝統」以外にはさしたるメリットがなく、タイポグラフィーの専門家からの低い評価も踏まえると、Timesとならぶメジャーフォントとして読み手にも違和感を与えず、かつ読みやすさも確保されたArialが無難な選択 と言ってよいのでしょう。
さらにその先の、オンラインの電子契約時代を見据えた将来性を先買いするのであれば、スクリーン上で見やすいCalibriを積極的に選択 してみる。そんな使い分けでいかがでしょうか。
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