利用規約の格付サービス「Terms of Service; Didn’t Read」
毎日数えきれないほどのウェブサービスを利用する時代。面倒な利用規約・プライバシーポリシーの確認を誰かが代わりにやっておいてくれないものか?そんな期待に応えてくれるサービスがあります。
プライバシーポリシーを読むために必要な時間は年間244時間
ウェブサービスを利用するにあたっての利用規約やプライバシーポリシー。みなさんは、どのくらいの時間をかけてこれらを読み、チェックしているでしょうか。
米国の研究では、平均的なユーザーは公私合わせて年間1462サイトを訪れており、そのプライバシーポリシーを読むためには年間244時間を要する、と試算したものがあります(A. M. McDonald and L. F. Cranor,“The Cost of Reading Privacy Policies”)。244時間と聞くとそんな馬鹿な!と思われることでしょう。一方で、年間で訪問するサイト数が1462というのは、あながち不自然な数字ではなさそうに見えます。
つまり、ウェブ上の利用規約・プライバシーポリシーは読まずに同意するものという感覚が常態化しているからこそ、世の中がスムーズに回っていると考えるのが自然です。そのことを証明するものとして、Wi-FIスポットの利用規約にボランティア活動1,000時間実施の同意をこっそり忍び込ませたところ、2万人以上が気付かずに同意した、という実験もありました(「ほら読んでないでしょ。利用規約に隠された「トイレ掃除」に2万2000人がうっかり同意。」)
長い利用規約を代わりに読んで評価&要約してくれるサービスがあった
ほとんどの方が読まずに同意ボタンを押している、これは決して健全な状況とは言えません。一方で、利用規約・プライバシーポリシーの長さが短くなったり、その存在が必要なくなったりすることは、しばらくなさそうでもあります。
そこで、この状況を解決するアイデアとして、「自分ではない誰かに代わりに利用規約を読んでもらい、その評価スコアと要約をみんなでシェアしたら良いのでは」と考えたサービスがあります。それがこの「Terms of Service; Din’t Read」です。日本語に訳すなら、「どうせ君が読まなかったであろう利用規約の数々」といったニュアンスでしょうか。このサービスの存在は、公私ともにお世話になっているシティライツ法律事務所の平林健吾先生(@kengolaw)に教えていただきました。
ウェブサイトを訪問すると、著名ウェブサービスの名前が並び、Class A〜Eの評価とポイントが列挙されているのが分かります。Google Chromeのウェブストアで無料でインストールできるエクステンションが提供されており、これを組み込んだ状態で評価済みウェブサービスを訪問すると、そのサイトの利用規約の評点と要約されたポイントが画面上にポップアップで表示され注意喚起してくれるという仕組み。普段からまじめに利用規約を読んでなくても安心、というわけです。
この仕組みのベースとなるClass A〜E評価の格付けとポイントの要約の作成を、サイト参加者の集合知で実現しています。ちなみに、Youtubeはご覧の通りClassDと厳しめの評価がついているようです。先日の記事でGDPR対応のお手本としてご紹介したDuckDuckGoには、最上級のClassA評価がつけられていました。
サービスだけでなく利用規約の品質まで比較される時代へ
ユーザーとして使うウェブサービスである以上、本来は自分自身の目で利用規約を読み、自己責任のもとで利用すべき。しかし、限られた時間とマンパワーを、こうした確認作業にばかり費やしているわけにもいきません。その利用規約がどの程度危ないのか、ある程度の目星をつけるために他人の力を借り、危なそうであれば必要に応じてじっくりと時間をかけて吟味するというのは、メリハリが効いたインターネットの利用方法とも言えるでしょう。
それにしても、利用規約の品質とそこに透けて現れる顧客に対するスタンスがストレートに点数化されてしまう時代になってしまったわけで、これは企業にとっては脅威です。過去日本でも発生したネット炎上事件を見ても分かる通り、企業が小手先のテクニックで消費者を騙し有利な条件を勝ち取ろうとしても、集合知にかかればあっという間に暴かれてしまう時代になってきています。
こうしたサービスの存在によって、ウェブサービスが消費者に寄り添ったものに傾いていくであろうことは、想像に難くありません。
(橋詰)
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