第2回オープンラボで「患者からの個人情報取得同意」のリーガルデザインを考える
慶應義塾大学SFC研究所リーガルデザイン・ラボが主催する「オープンラボ」。3月19日に開かれた第2回は、医療情報という、ビジネスとは少し距離を置いた領域での法のデザインについて、医療従事者でもあるお二人の実務者・研究者を招いて発表とディスカッションが行われました。
矢作尚久氏「現在の日本の素晴らしい医療システムという社会インフラをどう残していくか」
ゲストスピーカーのお一人目は、慶應義塾大学SFC政策・メディア研究科准教授の矢作尚久氏。
「現在の日本の素晴らしい医療システムという社会インフラをどう残していくか」というテーマで、どうしてもトップダウン的な考え方に寄ってしまう行政の動きに対し、医療従事者として患者に寄り添った医療システムをデザインし、提案を続けてきた経緯をお話いただきました。
藤田卓仙氏「ゲノムデータを含む医療データの現場と未来の展望」
二人目は、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室 特任助教の藤田卓仙氏。
「ゲノムデータを含む医療データの現場と未来の展望」と題し、 個人情報としての医療データの取扱いについて、特にそこで発生する匿名化や同意取得の難しさを中心に、お話をいただきました。
「患者からの個人情報取得同意」のリーガルデザイン
お二方のプレゼンテーション終了後、リーガルデザイン・ラボ研究員の水野祐氏がファシリテーションするパネルディスカッションと会場参加者との質疑応答に移ります。
ここでは、医療情報の取得の場面でしばしば議論となる患者からの個人情報取得場面での「同意」の確からしさが話題の中心となりました。
個人情報保護法上、医療情報は「要配慮個人情報」に該当するため、その取得に当たっては慎重さが求められることは私も承知していました。一方で、同法で新設された「匿名加工情報」としての活用の道は、かなりあるのではないかとも思っていました。
ところが、実際の医療の現場では、「ほとんどの医療情報は、匿名加工化するのは困難」というのが共通の理解なのだとか。例えば、生年月日と性別、出生体重、週数の4つが組み合わさると、国内に限定すればほぼ個人が特定できるとする研究もあるのだそう。
このような、要配慮性だけでなく特異性も高い医療情報を患者から取得するにあたっては、
- 本人の意思を可能な限り事前に設定(eg.臓器提供意思表示カード)
- 患者の立場に立てる代理人の育成(eg.開業医など)
- 「丁寧なオプトアウト」
といった考え方を手がかりにした議論が進んでいるとのこと。
医療と個人情報保護の問題は、患者当事者としては身近な問題とは感じていたものの、医療ビジネスや社会制度の側から見た目線で考えたことはなかったこともあり、新鮮な時間となりました。
ScrapBoxで議事録が公開されているのがオープンラボの素晴らしいところ。都合が合わず参加できなかった方や、詳細をご覧になりたい方はぜひ訪問してみてください。
デジタルハリウッド大学大学院の協賛で開催されるオープンラボ。第3回以降も、協賛および共同研究を希望する企業及び団体を募集中です。希望される方は、こちらのフォームからご連絡ください。
(橋詰)
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