国交省「IT重説社会実験」がクラウドサインに注目
賃貸借契約における「重要事項説明書等(35条、37条書面)の電磁的方法による交付」を認めるための社会実験が、2019年5月からスタート。IT重説完全電子化の実現を後押しする存在として、クラウドサインが国土交通省の資料に取り上げられています。
重要事項説明書等(35条、37条書面)の電子化実験がスタート
賃貸借契約を締結する際には、借主保護を目的として、宅地建物取引士による重要事項説明と書面の交付が必須とされています(宅地建物取引業法35条・37条)。
2017年10月の宅建業法規制緩和、いわゆる「IT重説解禁」により、取引士による説明行為自体はWeb会議システム等で行うことができる ようになりました。しかしその一方で、
- 重要事項説明書(いわゆる35条書面)
- 主要な契約内容を記載した書面(いわゆる37条書面)
といった、IT重説に必要な2つの文書については「書面による交付」は引き続き必須 とされ、契約の完全な電子化が中途半端に阻害された状態が続いてきました。
①35条書面 | ②賃貸借契約書 | ③37条書面 | |
---|---|---|---|
書面 | 交付が必要 | 不要 (電子契約可能) |
交付が必要 |
書面交付すべき時期 | 契約が成立するまでの間 | — | 契約後遅滞なく |
取引士による説明 | 必要 | 不要 | 不要 |
取引士による記名押印 | 必要 | 不要 | 必要 |
このように、2017年の規制緩和では到達できなかったIT重説ですが、2019年5月より、完全電子化を目指して、35条書面・37条書面について電磁的方法による交付を認めるための社会実験をスタート することが、国土交通省「ITを活用した重要事項説明に係る社会実験に関する検証検討会」によって決定され、同省より公開されました。
また、本件については不動産業界紙でも大きく取り上げられています。
▼ IT重説、賃貸取引の書面の電子化で社会実験(不動産流通研究所)
国土交通省は12日、5回目となる「ITを活用した重要事項説明に係る社会実験に関する検証検討会」を開催。法人間売買取引に係るIT重説社会実験の継続と、新たに個人を含む売買取引に係るIT重説、賃貸取引を対象にした重要事項説明書等(宅建業法35条、37条書面)の電磁的方法による交付(書面の電子化)に係る社会実験の開始を決定した。
(中略)
いずれの社会実験についても、今年8月以降開催予定の次回検討会で実験結果を検証する。書面の完全な電子化については宅建業法の改正が必要なため「社会実験を踏まえ、いずれかのタイミングで業法改正を検討することになる」(同省土地・建設産業局不動産業課課長・須藤明夫氏)としている。
国道交通省の説明資料で注目されるクラウドサイン
このIT重説社会実験に関する国道交通省資料「重要事項説明書等(35条、37条書面)の電磁的方法による交付に関する社会実験の実施について(案)」が、同省ウェブサイトでPDF公開されています。
これを読むと、7ページ中2ページにわたって、クラウド電子署名サービスの代表例として、クラウドサインに関する具体的な言及があることが確認できます。
IT重説社会実験の資料において、このようにクラウド契約が注目されているのはなぜなのでしょうか?
その背景に、この社会実験で用いられる「電磁的方法」の基準が、2018年1月29日にクラウドサインの申請に基づいて経産省・国交省グレーゾーン解消制度で認められた、建設業法施行規則の技術的基準を参照している という点が挙げられます。
建設業法の分野でチャレンジを続けるクラウドサインの先進的な取組みが、今回のIT重説の完全電子化の検討において再評価いただけたものと考えています。
賃貸借契約完全電子化の実現可能性が高まる
同時に発表されている国交省資料「ITを活用した重要事項説明に係る社会実験の今後の対応(案)」を見ると、賃貸取引のIT重説化実績はすでに25,000件を超える一方、トラブルは0件であったと報告 されています。
この実績を踏まえれば、今回の社会実験に基づく契約手続の規制緩和の実現可能性も高いと考えられます。
宅建業法の改正により35条書面・37条書面の電子化が認められ、賃貸借契約プロセスの完全電子化が実現することで、クラウドサインがよりなめらかな社会の実現に貢献できることを期待します。
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画像:Mugimaki / PIXTA(ピクスタ)
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