第1回オープンラボで「リーガルデザイン」の片鱗に触れてきました
慶應義塾大学SFC研究所リーガルデザイン・ラボが主催する「オープンラボ」。その第1回が、昨日1月29日にデジタルハリウッド大学大学院の協賛で開催されました。
毎回、デザイナー・エンジニア等のクリエイターと、法分野からのゲストを一人ずつ招いて開催するこのラボで、今回、ゲストスピーカーとして登壇されたのはこのお二人。
お一人目は、表現研究者・映像作家で、多摩美術大学美術学部統合デザイン学科専任講師の菅俊一氏。
「踏み台としての制約、導線としての制約」と題し、何か創作を行う際に、あえて制約を設けておくことで創造性が誘発されやすくなるということについて、ご自身や学生がそうした制約をもとに制作された映像作品や、街中での観察事例をたくさんご紹介いただく内容でした。
もうお一方は、AI・ロボット法研究者で、国立研究開発法人産業技術総合研究所特別研究員の赤坂亮太氏。
「リーガルデザインとしてのロボット法研究」と題し、まだ実際に事件事故が起きていない・判例もない中で、法学者としてどのようなアプローチでAI・ロボットの法的責任を考えてきたのか、不法行為訴権を廃止したニュージーランド事故補償法など参照して考えた事例などを引き合いに、その思考プロセスをご披露いただきました。
お二方のプレゼンテーション終了後は、ファシリテーターとしてリーガルデザイン・ラボ研究員でありシティライツ法律事務所水野祐氏と同じくリーガルデザイン・ラボメンバーの川本大功氏を交えての、パネルディスカッションへ。
それぞれの詳細については、リンクを張ったScrapbox上に議事録も残されていますので、そちらでご確認いただければと思います。
リーガルデザイン・ラボの第1回オープンラボですが、かなりとっ散らかった内容に感じられたと思います。2人の発表者の発表は内容もレイヤーも背景もまったく違う。でも、これをあえてやることに意義があると私は考えています。
例えば、今日の赤坂さんの議論でいえば、ロボット法固有の先端の議論をあの場でやることもできたでしょうし、それはそれで意義のあるものにもなるでしょう。ただ、それは他でもできる議論です。
こと法律家は与えられた課題に対して「小さく」答えてしまうことに慣れている人種なので、このラボではあえて不安すら感じるくらいの跳躍がある議論を行ったほうが、最終的に議論できる事項の幅や深さは広がるのではないかと考えています。
とのこと。
私も、参加前に登壇者のお二人のご経歴や作品を予習した段階で、「今日は二人の話から共通項を無理に見出したり、具体的な知見や結論を持って帰ろうとするものではないんだろうな」と覚悟ができていたので、このとっ散らかりを素直に楽しむことができました。
むしろ予想以上にお二人の話が「リーガルデザインとは何か、その価値や可能性はどこまで拡がりうるのか」を具体的に・経験をベースに例示してくださる内容で、凝り固まった頭をほぐす良い時間になりました。
私がこのメディア「サインのリ・デザイン」で扱うテーマに照らして考えてみると、たとえば「契約を再発明する」というテーマについて、
- 菅氏のプレゼンから → 踏み台としての制約に、同意を無理に求めない契約、そして相手方が同意をしなかった場合の処理までを定めた契約、というものを考えたとき、どんな条文が書けそうか?
-
赤坂氏のプレゼンから → 債務不履行(契約違反)時の処理を定める条文として、債務不履行をした当事者が悪いという信賞必罰的な考え方だけではなく、債務不履行をするような相手方と契約した自分も悪いという喧嘩両成敗的な規定の仕方はないか?
こんなアイデアもふつふつと湧いてきています。
デジタルハリウッド大学大学院の協賛で開催されたこの第1回オープンラボ。第2回以降についても、協賛および共同研究を希望する企業及び団体を募集中です。ぜひという方は、こちらのフォームからご連絡ください。
(橋詰)
機能や料金体系がわかる
資料ダウンロード(無料)詳しいプラン説明はこちら
今すぐ相談