契約系リーガルテックベンチャー10選
海外で先行するブームがだんだんと伝播してきたのか、眠っていたユーザーニーズが噴出してきているのか、日本のリーガルテック市場も少しずつ盛り上がりを見せはじめてきました。
大手事務所出身の若手弁護士たちがリーガルテックベンチャーに参画する話を耳にする機会も増えるなど、優秀な人材も次々集まりつつあるようです。
そんな中、今回は、主に米国・英国のリーガルテック市場から、クラウドサインと同様「契約の再発明」領域でしのぎを削る契約系リーガルテックベンチャーを10社ほどリストアップし、この領域の方向性や傾向を探ってみたいと思います。
契約系リーガルテックベンチャー10選
▼Avvoka
https://avvoka.com/
契約書のひな形を簡単に作ることができ、それをベースに契約相手方と画面を共有してリアルタイムにドラフティングと交渉し、契約締結後には交渉結果をレビューできるツール。印象としては、Google Docsを法務向けに進化・洗練させたような感じでかなり使いやすそう。
▼Beagle
http://www.beagle.ai/
契約条件のリスクや、対象の条項の有利/不利を自動で分析し、わかりやすくグラフ・ビジュアル化して表示。文言修正コミュニケーションも、チャット形式で記録。コーポレートキャラクターのビーグルが可愛い。
▼Concord
http://www.concordnow.com/
電子署名はもちろん、オンライン交渉とその記録、契約書期限管理、契約稟議を含めた契約の締結〜管理までをすべて統合したクラウド型サービス。顧客事例にはintel、SONY MUSIC、U.S.Department of Transportation、Sheratonなどビッグネームがずらり。
▼CMx
https://www.contractexperience.com/
契約書の稟議・締結・保存をクラウド/オンプレミスどちらでも可能とするソフトウェアを提供。率直に言って画面から受ける印象は地味で堅実という印象ですが、使っているという企業をたまに耳にします。Webサイトに踊る #1 Contract Management Softwareの文字が目を引きます。ナンバーワンは本当なんでしょうか…。
▼ContractRoom
http://contractroom.com/
契約当事者双方の応答を含めた契約交渉〜締結までのワークフローを管理し、そのデータを集約してダッシュボードに表示することで、契約締結にかかるコミュニケーションの生産性向上を目指すことに力点を置いたサービス。2013年ごろには現在の形が完成していたようなので、リーガルテック企業としては老舗と言ってよいかもしれません。
▼Juro
https://juro.com/
2017 LegalGeek Awardを受賞し、注目を浴びているJuro。サービスの内容はこれまで紹介した企業のものと大きな差はないように見えますが、box、slack、Salesforce、Google Drive等のクラウドサービスとAPI連携できるのは、イマドキな感じですね。
▼LawGeex
https://www.lawgeex.com/
先日ご紹介したリーガルテックマーケットマップにも名前が載っていたこちらのLawGeexは、AIによる契約書レビューを前面に打ち出しているサービス。メディアでもよくその名前を目にします。それ以外の機能はほとんどアピールしていないのが潔いです。
▼NeotaLogic
https://www.neotalogic.com/
AIのエンジン部分を開発しサービスプロバイダーに提供。このエンジンを使ってNDA・不動産契約を自動生成する“Robot Lawyer Lisa”も提供しています。
▼Seal
https://www.seal-software.com/
あらゆるファイル形式の文書を文字認識し、抽出された文言をあらかじめ企業が設定したポリシーに照らし、リスクレビューするサービス。2016年のLegalTech News AwardのContract Discovery and Analyticsで優勝を納めています。
▼SeedLeegals
https://seedlegals.com/
今回紹介する契約テックの中でも、ベンチャー企業の投資契約管理という一部マーケットに特化した珍しいサービス。雇用契約書と連動してoption poolを管理したり、投資ラウンドが重なった際に契約データからcap tableを計算するところまで面倒をみてくれるものになっています。それにしてもすごいニッチなところを攻めたものです。
契約系リーガルテックはこの先どこに向かうのか
こうしてまとめてみると、契約系リーガルテックサービスが解決しようとしているテーマに、一つの方向性・傾向が見て取れます。それは、
「契約締結に至るプロセスで発生する契約当事者双方のコミュニケーションを、いかに生産性高く、美しく、楽しくマネジメントするか」
ということ。
これまでは、
- 契約書の雛形を簡単に取り出せて修正できる
- 契約書をAI(のようなもの)である程度自動的に作成できる
といった、一方当事者の利益だけに加担するようなテックばかりが目立っていたように思いますが、これらリーガルテックベンチャーをみていると、契約書の締結に向けた交渉フェーズのコミュニケーションまでマネジメントするテックが目立ってきています。
契約書とは、当事者双方が実現したい目的やテーマに向かってコミュニケーションを重ね、そのコミュニケーションを編集し合意として記録したものです(水野祐+平林健吾 Edit × LAW 第1回「契約書」参照)。二者以上が合意してはじめて契約となるのであって、一方当事者だけの独りよがりな意思表示では、契約足りえません。
テックならではの目新しさに囚われることなく、契約の本質を正面から捉え、それを強化・加速させるためのサービスが増えつつあるのは、リーガルテック産業にとって良い傾向といってよいでしょう。
本日は、まとめて10社をざっとご紹介しましたが、今後ニーズがあれば、こういったベンチャー企業のサービスを個別に紹介する記事も随時書いていこうと思っています。
最新リーガルテックの情報源4サイト
最後に付録として、信頼度と更新頻度の双方ともに高いリーガルテックメディアを4つ、ご紹介します。
ちなみに、今回紹介した契約系リーガルテックベンチャー10社も、これらのサイトで取り上げられた企業からピックアップしたものです。
▼Law Sites
https://www.lawsitesblog.com/
本当に個人でやっているのか疑ってしまう圧倒的更新頻度でリーガルテックをフォローしているブログ。「サインのリ・デザイン」も、ゆくゆくはこれぐらいの更新頻度をめざしたいものです。
▼Legaltech News
https://www.law.com/legaltechnews/
B2Bメディア企業のALMが運営するLAW.COM。その中のリーガルテックコーナーが充実しています。
▼ABOVE THE LAW Technology
https://abovethelaw.com/technology/
老舗法律メディアABOVE THE LAWのTechnologyコーナー。たまにsponsored contentが混ざっているので気を付けて。
▼LEGAL GEEK
https://www.legalgeek.co/
主に英国のリーガルテック企業を集めたサイト。イベントやアワードなども定期的に開催しておりコミュニティも活発です。
(橋詰)
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