契約書翻訳ツール「【T-4OO ver2】法務分野」を試してみた




契約書を機械(自動)翻訳してくれるツールは昔からいくつかありました。今でいうリーガルテックの走りと言ってよいと思いますが、ついにここまで使えるようになってきたか!と小躍りしたくなる製品を見つけましたので、レビューしてみたいと思います。

契約書の翻訳仕事は、労多くして功少なし

小躍りしたくなるのはなぜかといえば、法務担当者にとって、契約書の翻訳という仕事は、「経営者や社内の事業部門からよく頼まれるが、かかる労力に比して得られる効果が薄く、やりがいを感じにくい仕事」の代表選手だからです。

英文契約書を日本語に全文訳したペーパーを作るとなると、3年ぐらいの英文契約作成実務のある法務担当者でも、なんだかんだで1ページ0.5〜1時間ぐらい、A4×4〜5枚のNDA(秘密保持契約書)でいえば3時間ぐらいは消費してしまうのではないでしょうか。さらに英文契約独特の表現に込められたリスクの軽重も意訳しながら、読み手に日本語でできるだけ正確に理解してもらえるものを作るとなると、そのために必要な時間と文字数は増える一方で、結構な労力がかかります。

なのに悲しいことに、そうした労力をかけて作ったペーパーも、契約の世界では「ただの翻訳物」扱いです。契約書はあくまで翻訳の対象となる原言語で解釈されますので、実際の紛争場面では、翻訳バージョンは法的な意味や効果は持ちえません。つまるところ、社内のための内向きな仕事というわけです。

取引の現場で使われる契約書に訳文が添付されている場合でも「この日本語訳は、本契約の解釈上、一切の法的な意味を有しません」とか「訳文にかかわらず、英文を正とする」といった注記がされているはずです。そういう扱いになることがわかっているだけに、仕事としてのやりがいはなかなか湧きません。

Google翻訳の現状と課題

それならいっそGoogle翻訳でいいんじゃない?となるわけですが、いかにディープラーニングで鍛えられた優秀なGoogle翻訳といえども、契約書の翻訳精度まではまだ上げきれていないようです。たとえば、英文のNDA(秘密保持契約)で登場するそこそこ典型的な条項を訳してみると、

honyakut4oo_1.png

数年前のレベルとは比べ物にならないほどよくなっているとはいえ、契約の意味を解釈した日本語訳というレベルにはもう少しのところで足りず、といったところ。

さらに、情報管理という観点では、そもそもこういった無料の検索エンジンに社外秘を含みうる契約書をアップロードしていいのか、といった問題もあるでしょう。

専門性プラス人間らしさを追求する翻訳ツールの登場

そんな中、今回見つけたのが、ロゼッタの「【T-4OO ver2】法務分野」という製品(Webサービス)です。ちなみにこちらの読み方、てっきり「ティーヨンヒャク」かと思ってたのですが、Translation for Onsha Onlyで「ティーフォーオーオー」だそうです。

早速、さきほどGoogle翻訳にかけたものと同じ条項で試してみましょう。

honyakut4oo_2.png

無駄のない、より正確な翻訳結果が出力されました。Googleでも訳しきれていなかった細かなところ、

・shall be clearly marked … as “Confidential Information” on its source = その情報源に「秘密情報」と明記するものとする
・in tangible forms =有形の形式で

といったあたりも、もれなく翻訳。法務担当者が訳した翻訳だよと言われても、わからないレベルだと思います。

この人間らしさは、ロゼッタのプレスリリースでも推しポイントになっています。
http://release.nikkei.co.jp/attach_file/0462842_01.pdf

これまでの機械翻訳特有の訳文とは異なり、読みやすく推敲された日本文の表現力を実現しているのが特徴です。訳文の読みやすさでは人間よりも優れているケースが多くみられ、原文との整合性においてはまだ完璧ではないものの、訳文だけ読むとどちらが人間か判別するのが難しいレベルに到達しています。

なお、一瞬で翻訳結果が返ってくるGoogle翻訳とは違い、こちらは翻訳キューに入れてから文書量に応じた時間がかかります。ちなみに先ほどのNDAの条項一つで2分程度の待ち時間が発生しました。翻訳の進捗は、ステータスバーで確認できます。大量の契約書を一瞬で日本語訳してほしいというニーズはそうそうないですし、現状では許容できる範囲かと思います。

他の契約文言もいろいろ試してみて、経営者や事業部門向けの日本語参考訳作成ツールとしては、十分満足してもらえるだろうレベルだと思いました。なお、日本語を英語にする翻訳機能もあり、強化を予定しているとのこと。和文契約を英文契約に直しても、(英文→和文よりもさらに)法的には使いどころはないとは思いますが、ちょっとした英語の言い回しを確認するのにはいいかもしれません。

11月末まで試用版をお試しできるキャンペーン中とのことですので、ご興味ある方はこちらからどうぞ。
https://www.jukkou.com/lp/legal/

(橋詰)

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