割印とは?割印の押印方法や契印との違いまとめ
この記事では、ビジネス上で用いられる「割印(わりいん)」の意味やその効果、契約書に割印を押印する方法について、具体的に解説します。割印と間違いやすい押印方法として「契印(けいいん)」がありますが、本記事を読むことで、この二つの押印方法の違いについても併せて理解することができます。
1. 割印(わりいん)とは
2部以上の契約書を作成する際に、これら複数の契約書が同時に作成されたこと、および相互の内容に関連性があることを証明する印のことを「割印」と言います。
貸主と借主、雇用者と被雇用者などの甲乙間で契約を交わす場合、それぞれが1部ずつ保持するために2部の契約書を作成します。賃貸契約などでその債務を保証する保証人(丙、丁)を含んで契約を交わす場合は、関係者がそれぞれ1部ずつ保持するために3部以上の契約書を作成します。
同時に作成したこれらの契約書をずらして重ねて割印を押印することで、契約書の関連性が担保されます。
1.1 割印の押印方法と割印を押印する場所
割印は、複数の契約書にまたがって押印をするため、押し方や場所(位置)に配慮が必要です。下図のように、契約書の上部をずらして重ね、全ての契約書に印影がまたがるように押印するのが慣例です。
なお、割印の押印には、契約書の名義欄に押印した契約印と同じ印を用います。
1.2 割印を押印する人
割印は、契約に調印した契約当事者全員がそろってこれを行います。
A・B・Cの三者契約にもかかわらず、割印がA・Bのものしか押印されていない場合、Cにとっては自分が確認し押印したタイミングから内容が変わっていないか、確証が持てなくなります。
全員で割印をしておくことで、契約当事者の誰もが、調印当時の契約書と相違ないことを確認できることとなります。
1.3 割印を押印する際のコツと注意点
割印をきれいに押印するためには、コツがあります。
割印は、製本された契約書それぞれに、きちんと印影が残り、確認できるように押印する必要があります。割印を押印する際に注意したいのが、契約書と契約書の間に生じる段差(厚み)の存在です。そこで、
- ゴム等の柔らかい素材で作られた「印鑑マット」を下敷きに用いる
- ページ数の多い契約書はページを開いて段差(厚み)を最小化する
- 重心が偏らないように前後左右にまんべんなく力を加えて押印する
この3点に注意して押印すると、割印がきれいな印影で残ります。
2. 割印と契印の違い
割印は、袋とじで製本された契約書の綴じ目に押印する「契印(けいいん)」とよく混同されます。しかし、割印と契印には異なる役割があります。
割印は2つ以上の契約書を作成する際、これらの契約書の内容に関連性があることを証明するものです。一方、契印は、一つの契約書の枚数が2枚以上にわたる場合、その一部のページが後から差し替えられるのを防ぐために押印されます。
契印の役割についての詳細は、本メディアの関連記事「契約書の製本(袋とじ)の方法と契印割印のルール」をご参照ください。
3. 割印を押し忘れたら契約は無効となるのか
契約書への押印は行ったものの、うっかり割印を忘れてしまった場合はどうなるのでしょうか?
契約書に割印を押さなくとも、契約自体は成立しているため、その内容を証明する上での法的な効力は変わりません。ただし、契印がある場合と比較して、それらの契約書が同一のタイミングで作成され、関連があることを証明することが難しくなるため、相手が後から契約内容を改ざんした場合、トラブルに発展することもありえます。
こうしたリスクを回避するためには、すべての契約書に割印を押し、契約者全員の手元に同じ条件で作成された契約書を保管しておく方が良いでしょう。
4. クラウド契約なら割印は不要で証明の効力も万全
パートナーシップを組む始まりの段階で相手にわだかまりを持たないためにも、関係者全てが割印、契印に漏れがないように協力し合う必要がありますが、これには相応の手間が発生します。契約関係当事者が3社、4社と増えれば、それだけ割印の個数や回数も増えていきます。
一方、クラウドサインのような電子契約で契約書を作成・署名・管理すれば、デジタル技術によって完全に同一であることが証明できる契約書を、関係者全員に素早く電子的にシェアできるため、上記のような割印をする必要がありません。
クラウド上で確認、押印が完結するクラウドサインなら、一つの契約書を作成した後は、相手方に確認、押印を依頼するメールを送信するだけ。関係者全ての押印が完了した時点で、契約書の同一性も証明され、一部のページの改ざんも不可能なため、割印は不要となります。
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今すぐ相談この記事を書いたライター
弁護士ドットコムクラウドサイン事業本部リーガルデザインチーム 橋詰卓司
弁護士ドットコムクラウドサイン事業本部マーケティング部および政策企画室所属。電気通信業、人材サービス業、Webサービス業ベンチャー、スマホエンターテインメントサービス業など上場・非上場問わず大小様々な企業で法務を担当。主要な著書として、『会社議事録・契約書・登記添付書面のデジタル作成実務Q&A』(日本加除出版、2021)、『良いウェブサービスを支える 「利用規約」の作り方』(技術評論社、2019年)などがある。